東京工芸大学工学研究科建築学専攻
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東京工芸大学のグローバル COE プログラム採択にあたって  学長  若尾 真一郎  

このたび,本学建築学専攻の「風工学・教育研究のニューフロンティア」が文部科学省のグローバル COE プログラムに採択されました。このプログラムは大学院の教育研究機能の一層の充実・強化,世界最高水準の研究基盤の下で世界をリードする創造的な人材育成を図るため,国際競争力のある大学づくりを推進することを目的に設置されたものであります。今回の採択は,本学が平成 12 年度に学術フロンティア推進拠点として認定され設置した風工学研究センターでの研究成果,さらには 5 年前からの 21 世紀 COE プログラムでの研究成果など,長年にわたる地道な教育研究活動が高い評価を受けた結果であると言えます。

 さて, 21 世紀の地球は温暖化,環境破壊,エネルギー問題,強風災害などの様々な環境問題に直面しています。ここ数年の日本国内の様子を見てもゲリラ豪雨と称される局地的な雷雨の発生,季節外れの台風の発生,突風や竜巻等の強風災害の発生など環境問題に起因すると考えられる自然現象が目に見えて増加しています。世界全体に目を向けても超高層建築物の建設による環境の変化から起こるヒートアイランド現象,大型台風や竜巻による強風災害,温暖化による海水面の上昇など様々な環境問題が増加の傾向にあります。

平成 17 年に総務省が実施した「地球規模問題に関する意識調査」では,「日常生活の中で深刻に感じる地球規模問題」の第1位に地球温暖化,第2位に環境破壊があげられました。また「日本が率先して取り組むべき課題」についても同様の結果でありました。しかしながら,それらの問題は広範囲で多岐にわたるうえ国や地域によって社会的な背景,問題の重要性の捉え方や認識が異なっており必ずしも十分な対策が進んでいるとは言えない状況です。  

今回採択されたプログラムは,合理的な耐風設計手法の開発により都市防災に貢献することを目指す耐風構造分野,人と地球にやさしい環境づくりの実現を目指す通風換気分野,熱環境・空気環境の改善策の提案を目指す風環境・空気汚染分野の 3 つの研究分野で構成されています。人類の安全・環境の保全のために今まさに風工学という学問の重要性を十分に認識し,技術の進歩を図ることが求められているものと感じております。このプログラムでは米国ノートルダム大学と協力し各国の研究機関が連携する仮想的工学組織の構築にも着手を開始しております。まさに本学を研究拠点とする地球規模での教育研究システムの構築を目指すものであります。

また我々は人材の育成という重要な使命をも担っていると認識しております。耐風構造分野では人類に対する愛情を,通風換気分野では地球資源に対する愛情を,風環境・空気汚染分野では大気環境への愛情を教育の基本理念とし,国際的に活躍できる人材の育成を教育の基本理念に掲げております。真に国際的な視野と人類や地球に対する愛情を持ち豊かな国際的リーダーシップを発揮できる優秀な研究者や高等技術を国内外に輩出することを目標としております。

 さらに,これらの教育・研究目標を実現させるために,マネジメント体制並びに組織的支援体制についても充実を図っております。学長を議長とする GLOBALCOE 管理運営委員会を設置し,教育研究活動の推進の実務的な意見交換や今後の方向性,研究員等の人的側面,施設・設備等の物的側面での調整・支援等について協議を行います。学長のリーダーシップの下で全学を挙げて取り組む体制を整えています。また学外からの拠点形成活動への厳正な外部評価,指導・助言を行う機関として GLOBALCOE アドバイザリーボードを設置します。国内外の著名な風工学者をメンバーとし種々の意見や客観的な評価等を聴取し計画の軌道修正や将来計画の充実に資することを目的としております。

これからも世界各国の人口増加や経済の発展は続いていくでしょう 。 人類は自らがつくり上げていく文化・文明と自然との共生が重要かつ至難の課題となることは間違いありません。本学はこれからも社会に,そして世界に貢献できる大学として教育研究活動を推進してまいります。

本プロジェク トの研究成果が,人類が生を営むこの愛しむべき地球を守る大きな礎の一助となるものであることを強く確信しております。