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■研究目的
台風や竜巻による強風災害を低減することは,超高層建築物が林立する大都市や,高密度木造住宅地を持つ日本やアジア地区において, 特に重大な意味を持つ。また,国家安全保障上からも強風災害の低減は最重要課題である。Project1耐風構造分野では,より洗練された
耐風設計手法による高度な耐風安全性確保を目指して研究を行う。特に,地域特有の自然条件,経済性など,グローバルな視点に立った 真に役立つ技術の開発を心がける。
一方,米国ノートルダム大学・自然災害モデル研究所(NatHaz: Natural Hazards Modeling Laboratory)と共同で,地球的規模での強風
災害低減や,風工学教育研究,耐風設計法を実現するための新パラダイムの創成を共同で進めており,これは仮想的工学組織EVO
(Engineering Virtual Organization)の概念により構成される風工学に関するEVOとして,VORTEX-Winds(Virtual Organization for
Reducing Toll of Extreme Winds)構築という形で実践される計画である。
■達成目標
都市化や地球温暖化により激化すると懸念されている局地的な気象擾乱による竜巻,ダウンバースト等の発生に対し,これまでの突風被害
を分析するために必要な,突風と建築物,構造物の相互作用問題を,新たな実験手法を開発・提案しつつ,明らかにしていく。また,これ
ら突風と台風や季節風までも含めた強風による災害データの分析を試み,データベース,知識ベースという形でEVOのモジュールとして組み
込む手法を開発する。強風時には広い地域での災害発生が予想されるため,GPSによる構造物の風応答モニタリングシステムと,仮想空間に
おける構造物の応答,安全性評価システムを組み合わせ,リアルタイムに構造安全性を評価できる地域防災システムのプロトタイプを提案する。
強風災害発生後速やかに救援,復旧活動を開始し,住民の安全確保,生活再建に貢献するために,航空写真や衛星写真から被災地域を把握し
たり,被害の特徴を判断するシステムに必要な要素技術を開発する。特に,人工衛星は地球規模で利用可能なリモートセンシング技術であり,
国際的な防災に貢献できると考えられる。
アジア地域は,各国,各地域毎に,長い歴史を踏まえた独自の文化が栄えているが,建築物や構造物は,これらの文化や,気象条件などの
自然環境と密接に関連している。このことを踏まえて,地域性を考慮した耐風構法等を考案することは非常に重要である。研究プログラムでは,
密集市街地での隣接する建築物の影響による風圧力の影響や,低緯度地方での強い日射に対する遮熱機能が期待される屋根シートの風荷重評価
といった,アジアの地域性を考慮した諸問題に対しても検討を加える。
■研究の実施計画
年度別の具体的な研究活動面の実施計画は下記の通りである。
[2008年度]
・工学的竜巻シミュレータの改良と風速,風圧計測システムの整備
・突風等のガストフロント内での非定常空気力の特性に関する実験と解析
・GPSを利用した風応答モニタリング・ネットワークとモデル化
・EVO構築に関連する要素技術の開発
・EVO知識データベース「強風被害のデータベース」構築
・航空写真および衛星写真からの被害認識手法の開発
・エネルギー削減型屋上シート遮熱工法の風圧力に関する数値解析
・東アジアでの近代在来工法調査および屋根外装構法と気象データとの関係のとりまとめ
[2009年度]
・工学的竜巻シミュレータによる旋回流の計測と性状解明
・突風等のガストフロント内での非定常空気力の特性に関する実験と解析(継続)
・航空写真および衛星写真からの被害認識手法の適用性検討
・GPSを利用した風応答モニタリング・ネットワーク構築とモデル化(継続)
・建築物のピーク風圧力および風力に対する周辺建築物群の模型化フェッチの影響
・エネルギー削減型屋上シート遮熱工法の耐風性能評価手法の検討ととりまとめ
・EVO知識データベースのためのディジタル画像から被害評価モデュールの開発
・EVO解析設計モデュールとしての「空力データベース統合化モデュール」の開発
・東アジア以外のアジア地域およびオセアニア地域での外装構法と気象データとの関係調査
[2010年度]
・竜巻状の旋回流内での構造物の単体基本モデルへの作用空気力に関する実験
・突風等のガストフロント内での非定常空気力に対する建築物の応答特性解析
・航空写真および衛星写真からの被害認識手法の適用性検討(継続)
・飛散物試験装置および外装材繰返し載荷試験装置による外装材耐風性実験
・建築物のピーク風圧力および風力に対する周辺建築物群の影響の定量化
・屋上緑化システムの耐風安全性に関する風洞実験
・EVOの各種モデュールの調整とEVO組織の維持管理
・EVO知識データベース「風工学Wikipedia」の開発
[2011年度]
・竜巻状の旋回流内での市街地モデルへの作用空気力に関する実験
・飛散物試験装置および外装材繰返し載荷試験装置による実験(継続)
・屋上緑化システムの耐風安全性評価法のとりまとめ
・EVO解析設計モデュール「各種の等価静的風荷重分布」の収集整理
・EVO解析設計モデュール「建築物の動特性データベース」構築
・EVO知識データベース「風工学教育用コンテンツ」の開発
[2012年度]
・構造物の耐風設計における竜巻やダウンバースト等の突風の影響評価手法
・飛散物試験装置および外装材繰返し載荷試験装置による外装材耐風性試験法の開発
・各国風被害パターンの共通性抽出,開発途上国の風被害低減化対策検討資料の提供
・EVO解析・設計モジュールと知識データベースの統合
・EVOにより世界中の各種資源をサイバー設計スタジオ化した新設計枠組構築
■本プロジェクトの事業担当者およびグローバルCOE研究員等
・本学大学院 建築学・風工学専攻 教授 田村 幸雄
・連携先大学院 ノートルダム大学 自然災害モデリング研究所 客員教授 Ahsan Kareem
・本学大学院 建築学・風工学専攻 教授 大野 隆司
・本学大学院 建築学・風工学専攻 客員教授 大熊 武司
・本学大学院 建築学・風工学専攻 教授 松井 正宏
・本学大学院 建築学・風工学専攻 准教授 吉田 昭仁
・本学大学院 建築学・風工学専攻 GCOE客員教授 曹 曙陽
・グローバルCOE准教授 Thai-Hoa Le
・グローバルCOE研究員 郭 路
・グローバルCOE研究員 Chiu-Jen Ku
・グローバルCOE研究員 Yongchul Kim
・グローバルCOE研究員 Wu Zhehua
・グローバルCOE研究員 岡田 玲
論文一覧(2008.04 〜 2009.03)
主要研究成果(2008.04 〜 2009.03, pdf format: 7.9MB) |
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