世界的に見ると自然災害による経済的ロスの85%は強風に起因するものであり,最近は台風による災害だけでなく,竜巻等の突風被害も増加しており,地球温暖化との関連も議論されている。強風災害の低減は超高層建築物が林立する大都市や木造家屋主体の高密度住宅地を抱える日本などアジア地域では特に重大であり,台風やサイクロンによる都市や建物の被害が頻繁に発生し,多大な損失を社会にもたらしている。また,中国などの経済発展に伴う急激な都市化と人口集中,およびエネルギー消費の増大は,全地球的な環境悪化の原因にもなっており,エネルギー消費量の削減および環境負荷の軽減により持続性の高い社会を構築することも急務である。台風や竜巻等による強風災害の増加に世界が直面し,バルジ・ドバイを始めアジアや中近東で超々高層建築物の建設が続く中,人類社会の安全,地球環境保全のためには,複合学問としての風工学のグローバル性を強く認識した上で技術の進歩を図る必要がある。本拠点は,耐風構造分野での強風災害低減,通風換気分野での自然エネルギー利用による省資源化,風環境・空気汚染分野での地球環境保全のため,全地球的規模での風工学教育研究を行うものである。従来から本拠点が唱えてきた1教育研究拠点を中心とするCenterベースの教育研究から,Center-to-centerベースの教育研究への移行をより積極的に,かつ地球的規模で推進するため,世界中の研究機関を統合した仮想的工学組織EVO(Engineering Virtual Organization)VORTEX- Winds (Virtual Organization for Reducing Toll of Extreme Winds)を構築し,全球的な高度教育研究システムを創出する。自然と共生できる長寿命,循環型の都市形成,強風防災・減災による安心,安全な地球の実現に貢献し,グローバルな教育研究システムVORTEX- Windsによる世界中の風工学教育研究機関の質の向上を図ることを拠点形成の目的とする。
■拠点形成体制: 主として研究や国際集会の開催を行う風工学研究センター,若手研究者,技術者の教育,訓練を行う APEC 強風防災センター, Newsletter や Bulletin の発行,教育研究成果,実験データベース,教育コンテンツ等の Web 公開など国内外へ情報発信する風工学技術情報室の3組織が有機的に連携して,風工学の教育研究を推進するとともに,米国ノートルダム大学・自然災害モデル研究所と連携協力して,仮想的工学組織 VORTEX-Winds の構築を図る。 VORTEX-Winds は,世界中の研究機関が分散所有している電子的空力データベース,耐風設計用データベース,強風被害データベースなどの解析設計モデュールや知識データベースをリアルタイムで共有,相互補完し,サイバーインフラ (CI) 技術を用いて,より強力に統合するための教育研究プラットフォームを地球的規模で実現させるものである。