1)空調システムシミュレーションによる自然通風利用建物の省エネルギー効果の定量評価
密集住宅地の建物外表面の風圧と接線方向動圧のデータベースを作成し,建蔽率の違いによる風圧係数と接線方向動圧係数の特徴を把握した。次に、通風局所相似モデルLDSMモデルと換気回路網プログラム
COMIS及び多数室温熱解析プログラムTRNSYSを連成させて,通風利用による戸建住宅の冷房負荷の削減効果を評価した。その結果,積極的に通風を取り入れた場合,冷房負荷の削減率は各建蔽率とも50%以上
あることが明らかになった。
2)人工気候室の被験者実験による人体の発汗・蒸散の測定
人工気候室を建設し、温度は20℃〜35℃±0.5℃、湿度は40%〜70%±2%、風速は0.1〜2.0m/sの基本性能を得た。次に35℃70%の暑熱環境下で発汗量と風速の関係に関する被験者実験を行った。その結果、
部位別の発汗量と風速の関係は、個人差が大きいものの、概ね風速が上昇するにつれて発汗量が低下する傾向が見られた。また、全身発汗量は、部位別の発汗量に比較すると個人差が小さく、
風速の影響も少ない結果となった。全身蒸発量は、風速によって変化し、風速が低いほど蒸発率が低下することが確認された。
3)自然通風除湿空調のためのAPEC地域の気象データ調査とフィージビリティスタディ
自然通風換気のため、強風時でも微風時でも一定の自然換気量を得ることができる定風量自然換気装置を検討した。装置の試作は実験よりチャッキダンパを改良し、重りとバネを使うことで定風量特性が
得られる条件を検討した。その結果、低風圧から高風圧まで広い範囲で定風量性能を有する自然換気ダンパを試作できた。さらに、実際の気象データを使って、試作したダンパを採用した場合の換気量を予測し、
広い風速範囲で一定の換気量が得られることを確認した。除湿システムに関しては、珪藻土を用いた除湿装置を試作し、吸放湿特性を把握した。また、その吸放湿特性を実際の気象データにあてはめ、
少ないエネルギーで除湿・再生できる可能性があることを確認した。
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