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東京工芸大学
工学研究科建築学・風工学専攻
グローバルCOE支援室
〒243-0297
神奈川県厚木市飯山1583
TEL&FAX046-242-9658(直通)
E-mail:gcoeoffice@arch.t-kougei.ac.jp

強風防災分野(2008年度)

1)工学的竜巻シミュレータの改良と風速,風圧計測システムの整備
従来の工学的竜巻シミュレータを改良した。上昇気流発生装置を移動可能なフレームに設置可能なものとし,実験装置床面に昇降装置を施し,収束層高さを可変できる実験装置を構築した。また,今後の研究環境整備として,風圧計測システム,風速計測システムが整備された。この実験装置による竜巻状旋回流発生実験が様々な条件の下に実施され,移動効果と旋回流発生状況の関係が調査された。移動効果が加わると旋回流の発生にはより複雑なパラメータの組み合わせが必要となる事が明らかとなり,現象を明確に説明するためのシステマティックな実験の計画へと移行する。

2)突風等のガストフロント内での非定常空気力の特性に関する実験と解析
マルチファンシステムを利用し,ガストフロント構造を実験室で再現するシミュレーションに着手した。このようなガストフロントの過渡応答の再現にはWaveletやHilbert変換を用いた時間−周波数領域での新たなシミュレーションスキームを用いることの有効性が明らかとなった。さらにガストフロント内の物体に作用する空気力を計測し,従来のガスト影響係数に相当するガストフロントファクタの提案を行った。

3)GPSを利用した風応答モニタリング・ネットワークとモデル化
GPSを用いた風応答モニタリングのネットワーク化を進めていく計画において,都市域における建物群の計測を行う上で,克服すべきGPSの問題点が明らかにされている。その問題点とは、GPSによる計測精度を保つために必ず設置する必要がある基準点のGPSアンテナが都市域においては林立する高層建物の中に設置することになり、人工衛星からの電波が受信できないことが多く、また周辺建物からのマルチパスと呼ばれる反射波の影響により計測精度の低下が起こることであり、現在まではこれらの問題点を克服することができていない。そこで,これらの問題を克服すべく,仮想基準点(VRS: Virtual Reference Station)の概念を取り入れ、都市域にVRSアンテナ網を構築することを目標とし,本年度は仮想基準点の基本的な性能の把握,仮想基準点を用いた場合のGPS計測の精度検証,仮想基準点を用いた場合の問題点などの検証を行った。その結果,仮想基準点を用いた場合においても,仮想基準点データの生成に用いた実基準点の位置関係や衛星の配置状態にもよるが,仮想基準点の状態が良い場合には,実基準点を用いた場合の計測精度と比較しても大きな差は見られず,仮想基準点を用いた都市域の風応答モニタリングのネットワーク化に用いることの可能性が示された。

4)EVO構築に関連する要素技術の開発
国際的なEVO構築のため,協力者を集め,組織全体のデザインを行った。特に要素技術としては,e-analysis, design, knowledge baseの3モジュールについて,基本的構成を構築した。 これらのモジュールにはインターネットWebシステムをインターフェースとする。構築に当たっては,EVOの一員である台湾Tamkang大学によるデータベース等が統合された。 ハリケーンIkeによる外装材の被害分析資料などがwindwikiシステムを通じてcrowd-sourcingされknowledge baseに集積された。

5)EVO知識データベース「強風被害のデータベース」構築
強風被害を類型化する試みとして,飛散物の発生状況とその影響に関する項目を抽出し整理した。特に飛散物被害が顕著な竜巻等の気象擾乱については,Fujitaスケール別の飛散物の状況などが明らかとなった。

6)エネルギー削減型屋上シート遮熱工法の風圧力に関する数値解析
低緯度アジア地域の建築物は遮熱に関する性能も重要である。強制換気や冷房の負荷を減らし,エネルギー消費の低減に貢献できる屋上シート遮熱工法について,耐風性を風洞実験結果を利用した数値解析手法により評価した。 評価に当たっては,シートの通気性やシート下面の空気層の影響等を考慮できる新たな数値計算法を考案し,シート両面の風圧力を適切に評価し風荷重の特性を調べた。

7)東アジアでの近代在来工法調査および屋根外装構法と気象データとの関係のとりまとめ
外装構法の計画にあたっては,風速(風圧力)と降水量データの把握が重要である。例えばカーテンウォールなどの設計においては,その同時確率を求め,それを根拠に必要に応じて実験し,詳細が決定される。 アジア東部地域の外装の在来構法を検討するにあたり,比較的新しい気象資料をもとに各地域・地点における風速と降水量データを収集整理するとともに,風速と降水量との同時確率の評価を行った。 特に,風雨同時確率値を用いた主成分分析により類似性を検討する手法を提案し,収集したデータに適用した。その結果,第1主成分は全体的に同時確率が大きなことを(室戸岬が最大スコア), 第2主成分は風速に関わらず安定した同時確率であることを(JAKARTAが最大スコア)表す傾向があることが明らかとなった。日本とアジア東部地域での“強い”風・雨条件下での差異に着目した位置付けの 可能性が示された。