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東京工芸大学工学研究科建築学専攻
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第1回 国際シンポジウム
「都市・建築物へのウインド・イフェクト」

開催日:2004年3月8日~9日
会  場:日本学術会議 講堂
主  催:東京工芸大学21世紀COEプログラム
後  援:日本学術会議、日本建築学会、空気調和・衛生工学会、日本風工学会

参加者:200名


東京工芸大学工学研究科建築学専攻の21世紀COEプログラム「都市・建築物へのウインド・イフェクト」により、第1国際シンポジウム(International Symposium on 'Wind Effects on Buildings and Urban Environment', ISWE1)が開催された。
 第1日目の冒頭,今年度の日本国際賞を受賞された本多健一・東京工芸大学学長により、参加者への歓迎の挨拶がなされ,本学の21世紀COEプログラムの意義、大学全体の積極的な推進,支援体制等について説明があり,2日間のシンポジウムを大いに有意義なものとして欲しい旨,付言された。
 続いて、21世紀COEプログラムリーダーである田村幸雄教授から、本プログラムで扱う風に関する幅広い問題と、この研究プログラムを通して世界の人々を幸福に結びつけることの必要性が熱く語られた。また,東京工芸大学21世紀COEプログラムを構成する主要な3つのプロジェクト,強風災害低減システム,通風設計法,空気汚染問題とその評価システムの各リーダー,田村幸雄教授,大場正昭教授,小林信行教授による研究の展望,進捗状況が報告された。
 
COEプログラムに対する参加者の興味は大きなものがあり,田村教授の発表に関したはGPSモニタリングに対するマルチパスの影響に対する質問,小林教授のengineering public healthという新しい研究分野の提案に対するコメント,大場教授の自然換気に関しては,火災時の特に煙の拡散の問題への質疑など,会場から活発な議論がなされた。

 引き続き,国内外からの招待講演者による風工学の各分野における最新の知見や歴史的背景などに関する質の高い講演がなされ,熱心な質疑応答が繰り広げられた。伊藤学・東京大学名誉教授(IABSE会長)からは,長大橋に対するこれまでの日本の耐風設計法の変遷,風工学会の取り組みが紹介された。秋山宏・日本大学教授(日本建築学会会長)は,高層建築物に対する耐震,耐風設計をエネルギー的視点から捉える考え方を紹介した。村上周三・慶応大学教授(空気調和・衛生工学会会長)からは,風力エネルギー評価のために局地風を予測する数値流体計算手法について,豊富な計算例と数々の乱流モデルの比較,紹介がなされた。Chris Baker・英国Birmingham大学教授は,弱風から強風に至るまでの風工学に係る幅広い問題について考察し,風工学と他分野の情報交換,交流の重要性を強調した。加藤信介・東京大学教授からは,ハイブリッド換気手法の詳細な紹介があり,その有効性が示された。Robert Meroney・米国Colorado州立大学教授は,火災時の人的被害が主として煙によるものであるとして,外気との境界となるアトリウム空間の壁面形状等の問題点について,多くの事例に基づき考察した。Kenny C.S. Kwok 香港科技大学教授は,クレーン加振,人力加振,常時微動,風外乱など様々な加振条件の下での高層建築物の振動特性の実測手法とその問題点について,事例を交えながら紹介した。Bogusz Bienkiewicz 米国Colorado州立大学教授(米国風工学会会長)は,20035月のMissouri-Kansas tornado等を含む,各種の強風災害事例や事後の調査手法等について紹介し,問題点を議論した。神田順・東京大学教授は,特に,変動風圧の非Gauss分布性状について検討し,この確率分布を近似する手法について紹介した。

 第2日目は,松本勝・京都大学教授(日本風工学会会長) による種々の2次元基本断面および橋梁橋桁断面の空力特性と空力不安定現象に関して,総括的で分かりやすい解説がなされた,多くの未解明の問題が残されていることも示された。You-Lin Xu香港理工大学教授は,実測に見られる風速の非定常性についてempirical mode decompositionという新しい手法を使って解析した結果を示した。Giovanni Solari・イタリアGenova大学教授(国際風工学会会長) は,風応答による疲労損傷評価法について検討し,バフェッティングや渦励振による影響評価手法を示した。Ahsan Kareem米国Notre Dame大学教授は,残念ながら直前に参加できなくなったが,送付されてきた3-D Gust Loading Factor法について最新の知見を紹介する講演用pptにより,田村幸雄教授による代理発表が行われた。John D. Holmes ・オーストラリアJDH Consulting所長は,風災害で主要因となる強風時の飛来物に関する空力的取扱と,その軌道の評価方法について述べ,火災に伴う飛来物に関する資料が消防関連で整備されていることなどがコメントされた。Chii-Ming Cheng・台湾Tamkang大学教授は,種々の平断面の高層建築物の耐風設計に利用可能な空力データベース,知識ベースについて紹介した。Alan P. Jeary・オーストラリアWestern Sydney大学教授は,構造物の風応答に対する減衰評価の重要性を強調し,そのメカニズムと振幅依存性の特徴等について述べた。Ted Stathopoulos・カナダConcordia 大学教授は,低層建築物の陸屋根における煙突と屋根面の剥離領域の影響について,最近の知見を述べた。河井宏允・京都大学防災研究所教授は,十分な設計資料が整備されていないダブルスキンファサードに作用する風圧力の特性に関する風洞実験結果について述べ,開口部位置の影響などについて紹介した。

 以上,海外から11名、国内7名の講演者は,全世界より招待された風工学の第一人者であり、全て,極めて質の高い有意義な講演であった。これに国内外から多くの研究者や技術者を加えて200名の参加者を得、最先端の情報交換や質疑応答を通じて,参加者全員にとって意義深い2日間となった。


 
           会場の様子                      田村幸雄拠点リーダー

Program
8 March (First day)
9:30 - 10:30
田村 幸雄 、大場 正昭 、小林 信行 (東京工芸大学)
  COEプログラム紹介
  プロジェクトI: Wind hazard mitigation
  プロジェクトII: Natural/cross ventilation
  プロジェクトIII: Indoor/outdoor air pollution
10:45 - 11:20
伊藤 学 (IABSE会長)
  Wind engineering and large bridges
11:20 - 11:55
秋山 宏 (日本大学)
  Interaction of Seismic Design and Wind Design in High-rise Buildings
13:00 - 13:35
村上 周三 (慶応義塾大学)
  Prediction of local wind energy by means of CFD
13:35 - 14:10
Chris Baker, The University of Birmingham, UK
  Wind effects in the urban environment - considerations for human health, comfort and safety
14:10 - 14:45
加藤 信介 (東京大学)
  Hybrid indoor climate conditioning of wind induced cross ventilation and air conditioning
14:45 - 15:20
Robert Meroney, Colorado State University, USA
  Smoke and fire in building atria
15:40 - 16:15
Kenny C.S. Kwok, Hong Kong University of Science and Technology, Hong Kong
  Wind effects on tall buildings in typhoon prone urban environment
16:15 - 16:50
Bogusz Bienkiewicz, Colorado State University, USA, President of AAWE
  Lesson learned from damage investigations; a case study of May 2003 Missouri; Kansas tornadoes
16:50 - 17:25
神田 順 (東京大学)
  Approximate probability distributions for peak pressure coefficients
9 March (Second day)
3月9日 9:15 - 9:50
松本 勝 (京都大学)
  Bluff body aerodynamics / bridge aerodynamics – Vortex interaction to aerodynamic instability
9:50 - 10:25
You-Lin Xu (The Hong Kong Polytechnic University, Hong Kong)
  Wind Characteristics in Typhoon Prone Urban Areas
10:40 - 11:15
Giovanni Solari (University of Genova, 国際風工学会会長, Italy)
  Wind-induced Response and Fatigue of Structures
11:15 - 11:50
Ahsan Kareem, University of Notre Dame, USA
  Wind effects on tall buildings in urban environment
13:00 - 13:35
John D. Holmes, JDH Consulting Mentone, Australia
  The aerodynamics and mechanics of wind-borne debris
13:35 - 14:10
Chii-Ming Cheng, Tamkang University, Taiwan
  Wind tunnel database for an intermediate wind resistance design of tall buildings
14:10 - 14:45
Alan P. Jeary, University of Western Sydney, Australia
  Damping mechanisms and damage in large structures
15:05 - 15:40
Ted Stathopoulos, Concordia University, Canada
  Wind-induced dispersion of exhaust from rooftop stacks and air-intake contamination
15:40 - 16:15
河井 宏允 (京都大学)
  Wind pressure on double skin facade